
1文に言いたいことは1つ、1段落にも1つ、文章全体でも1つ。編集の基本です。この編集が特に徹底しているのが、タモリさんの旅番組『ブラタモリ』です。
各種プレゼンテーション、商談、お知らせ作りにかんたんに生かせる内容です。
1文に言いたいことは1つ、1段落にも1つ、文章全体でも1つ。編集の基本です。
1つのテーマを徹底するブラタモリ


ブタラモリは45分間の旅番組です。冒頭にテーマを1つだけ示し、番組内で答えを出す構成を取っています。

ブラタモリ松本編に登場した松本城(長野県)は、豊臣・徳川はじめ、3人の武将に重用されたお城です。ブラタモリでは、冒頭に「国宝・松本城はなぜ(武将に)愛された?」というテーマを提示します。
タモリさんが松本の街を歩きながら、その答えは地形にありという結論を出してゆきます。
松本市は、扇状地(川の出口に広がる扇状の地形)が複数ある複合扇状地ですので、地下水が湧きやすくなるという内容です。城下町の発達には、水が不可欠でした。
【ブラタモリ松本】全内容・ルートを写真でまとめと要約!#183|再放送も掲載
初めから結論1つが徹底されていたわけではない


現在、200回を数えるブラタモリですが、初めから結論1つが徹底されていたわけではありません。例えば、第94回の吉祥寺編では、少し複雑な結論が出されています。
テーマは、なぜ人は吉祥寺に住みたがるのかの1つに絞られていましたが、結論は多少分岐が見られました。
- 江戸市中の人にとって水源地として知られ、弁財天もある人気の観光地だった。
- 2つの上水やその分水が設けられ、住みやすく農業を営むにも適した土地だった。そのため、明暦の大火を機に、多くの人が移り住んできた。
- 同時に移転した寺院が甲武鉄道(現在のJR)の吉祥寺駅開設を手助けし、たまたま広大な井の頭公園の直近となり、街のステータスをも上げている。
一応、武蔵野台地の比較的東にあり、水が湧きやすいというまとまりがありますが、番組自体は、列挙的(井の頭公園、明暦の大火、水源、甲武鉄道)だった印象があり、意識しなければまとまりは見えてこない展開でした。
【ブラタモリ吉祥寺】タモリ推奨の吉祥寺の歴史・地形・観光ルートまとめ #94
結論1つが徹底された「三英傑(信長・秀吉・家康)スペシャル」


一方、最近放映された「三英傑(信長・秀吉・家康)スペシャル」は、岐阜編、大阪編、名古屋編をまとめるという散らかりやすい条件でしたが、経済発展につながる町づくりという点で、見事にひとつの結論に導いていました。
三英傑(信長・秀吉・家康)は、戦乱の余韻が残る時代背景にも関わらず、経済発展を見込んだ、先進的な町づくりで共通している。

徳川家康が設計した名古屋の町割は、碁盤の目に引かれた道路に、間口の狭い商店が軒を連ねる形とされ、町や商取引の活性化を促しました。

名古屋の中心部の名物的存在である、100mの幅を持つ久屋大通は、徳川家康が設計した町の区画を、連続して貫くことで作られました。

三英傑(信長・秀吉・家康)の経済発展を見越したまちづくり、というだけでも十分に統一感がありましたが、最後に印象的なダメ押しがありました。


大阪、名古屋、江戸城は、台地の先端という点も一致しますね。
大阪、名古屋、江戸城は、守りの都合があり、舌状台地(台地が平地に臨む末端の部分で、舌のような形状で突き出した形)の先端に立地していたのです。この一言で、視聴者は番組全体が印象に残ります。
バラつきが目立ったアド街
奇しくも、ブラタモリ三英傑スペシャルと同日に放映されたのが『出没!アド街ック天国 -原宿編』。カワイイカルチャーとV6の聖地「原宿」というテーマからして、やや焦点が絞れない感がありましたが、番組では解散するV6の特集のような雰囲気のなか、13位にスポンサーのアドバンのショールームが登場したのも、バラつき加減を加速した印象です。
※『出没!アド街ック天国』の編集が悪いという訳ではなく、筆者は毎週見ています。
【ブラタモリ三英傑(信長・秀吉・家康)スペシャル】全ルートをまとめ|大阪・名古屋の町割りを探る#sp
伝えたいことはいろいろあるが……


ブラタモリは、取材を行ってもカットすることが多い番組として、知られています。

ブラタモリつくば編では、ブラタモリで地形の模型作りをよく担当される高橋雅紀先生(理学博士)が登場しています。高橋先生は、過去にいくつもの力作が、番組では不採用になったことを明かしています。
結論1つの流れを最優先する、編集方針です。
ブラタモリでは、タモリさんが、そばなどを食べるシーンがエンドロールに出てきますが、番組本編で食事をすることはめったにありません。
ブラタモリ浜名湖編のうなぎ、ブラタモリさぬきうどんのうどんなど、テーマに関わるわずか数例です。


プレゼンテーションや、商談、お知らせ作りなど、自分が詳しいことを伝える際、つい熱が入って、あれもこれもと列挙しがちではないでしょうか?
しかし、受け取り手は、多ければ10社のプレゼンテーションや商談を聞くはず。各社が3つの訴求ポイントに絞ったとしても、30もの要素があり、心に残るとは言えません。
1文に言いたいことは1つ、1段落にも1つ、文章全体でも1つ。編集の基本です。
伝えたいことは数多くあれど、相手の関心度とこちらの詳しさや関心度には、落差があります。伝えたいことは1つに絞るのが、ポイントです。
ブラタモリ全体でも伝えたいことは1つ?

筆者はかつて会社のプレゼンテーションを担当したとき、「会社の特徴」という相手の要求に、5つ程度のポイントを提示してしまった経験があります。
会社の側からは、「チームワーク」というキーワードだけが示されていましたので、今となっては、それに素直に従うべきだったと思います。
会社の商品やサービスごとにたった1つの特徴があり、会社全体にもたった1つの特徴があるのです。

ブラタモリも同様です。
ブラタモリの第1回は、長崎編でした。有名な、坂の町です。ブラタモリは、1回1回に主張がありますが、ブラタモリ全体の主張は「高低差に注目すれば町歩きは楽しくなる」ではないかと思います。
- ブラタモリ松本 … 複合扇状地がつくる斜面に水が湧き、多くの武将が愛した城。
- ブラタモリ吉祥寺 … 武蔵野台地の斜面が、溜めた水を吐き出す場所が吉祥寺。
- ブラタモリ三英傑(信長・秀吉・家康) … 舌状台地の先端に作られた歴代の城。
ブラタモリが人気を集めた理由の1つは、この主張の明確さにありそうです。
ブラタモリは個々の番組でも全体でも、同じ内容( 高低差に注目すれば町歩きは楽しくなる )をくり返していると言えます。
プレゼンテーション、商談、お知らせ作りから、商品やサービスの設計にも、同じ理屈が成り立つはずです。

参考までに、当ブログ(とらべるじゃーな!)では、全体として「関東圏からずらし旅を楽しもう」という1点を伝えようとしています。

さいごに、その1つの主張をより確実に伝えるためには、埼玉県立自然の博物館で主任学芸員を務める井上素子さんの見解が参考になります。
ブラタモリの番組制作に携わる中で認識された、重要となる視点のうちの1つです。
科学的知識を説明するのではなく,知的に楽しむ姿を見せる.
結局のところ,視聴者はタモリ氏が知的に楽しむ姿に同調しておもしろさを感じている.放映終了後好評をくださる視聴者も,案外と論理展開は覚えていないことが多かった.地球科学を楽しむ姿を見せることこそが最大のアウトリーチである.
ブラタモリ番組制作に学ぶ博物館のアウトリーチ活動の在り方
プレゼンテーション、商談では、商品やサービスの特徴を単に説明するのではなく、作り手の期待感や楽しむ姿勢をそのまま見せるということもポイントになります。
補足すると、展開そのものは冷静で理論だった説明であっても、そこに作り手の「笑み」や「自分事としての関心の高さ」が隠し切れないという形が想定できます。
ブラタモリ大名屋敷編は、大名屋敷を多数取り上げ散らかりやすい内容でした。しかし……
— ブラタモリ (@buratamori2018) April 17, 2022
🌳前編は、井伊家の中屋敷・上屋敷を1つずつ紹介しそのイメージを伝える。
🌲後編は、毛利家が移転するなかで暮らし向きを整えたこと。
明確なテーマ性。これが現在のブラタモリです😎https://t.co/Drqbs0P2qh
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週末のブラタモリは、島根県の石見銀山!😎
— ブラタモリ (@buratamori2018) September 1, 2022
鳥取砂丘→境港・米子→松江→出雲大社→石見銀山の順で、ロケ地巡りができそうです!
※昨夜は佐渡金山編でした(https://t.co/ckB9BxZnSw) pic.twitter.com/K7f2H6yfbp
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